Last Chance


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バドミントン短編小説

小さなオープンバドミントン大会での決勝戦。

コートに立つのは、小学校からバドミントンを続けてきた双子の兄弟。

これまでずっとできなかった真剣勝負。

果たしてその結果は・・・

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ごくごく普通の、小さなオープンバドミントン大会の決勝戦。

優勝したからといって日本一になれるわけでも、学校の名前が上がるわけでもない。


だけど僕たちは、インターハイ決勝戦よりも熱くなっていた。

・・・と言っても出たことはないだけれど。


僕たち双子の兄弟は、小学生の頃からバドミントンをやってきた。

おそろいのジャージを着て、おそろいのシューズを履いて、おそろいのラケットを使って、同じチームで練習してきた。

高校は別になってしまったけれど、それぞれの学校で部活に入ってバドミントンを続けてきた。


学校が別になったことで、僕達は一緒にバドミントンをすることがなくなった。

ジャージも、シューズも、ラケットも別のものを使うようになった。


いつしか僕は、遊びや練習ではなく大会で真剣勝負の決着をつけたいと望むようになった。

別に仲が悪いわけではない。

むしろ良すぎるくらいだと思う。


僕が兄との勝負を意識してから、これまでチャンスは3回あった。

でも僕たちは、まだ一度も同じコートに立っていない。


1回目のチャンスでは、僕がレギュラーになることができなかった。
 
自分の学校の選手を応援しつつ、隣のコートで活躍する兄を横目で見ては奥歯をかみしめていた。


その悔しさを晴らすべく 僕は人一倍練習した。

そしてめぐってきた2回目のチャンス。

しかし大会当日、兄が高熱を出して棄権してしまった。

高熱で苦しむベッドの上から、兄は本当にすまなそうに謝っていた。

何も言えなかった。


そして3回目。

同じ会場で目を合わせたとき、ようやくここまできた、と思った。

しかし僕たちは予選を勝ちあがれずに、それぞれ別の相手に負けてしまった。


学校の部活を通じての大会には、もう出られない。

だから、高校生以上ならば誰でも出られるこの大会に出ることにしたのだ。

兄も僕の話を聞いてエントリーしてくれた。


一進一退のまま最終セット終盤へと進んだ。

兄のマッチポイント、僕のセティングが延々と続く。


均衡は突然破られた。

僕が放った、コートの奥に振ってからネット際へギリギリヘのフェイント。

兄は必死の形相で突っ込んだが微かに届かなかった。

勢いあまって倒れこんだ兄に、客席から拍手が送られた。


それからしばらくして、僕はあることに気づいた。


兄の様子がおかしい。

運動量が落ちている。

少しだが左足を引きずっている

さっきの転倒でひねったのか?


しばらくして、僕がマッチポイントコールを受けた。

あと1点で勝てるんだ。


辺りがシンと静まる。

心臓の音が聞こえる。


ネットをはさんで兄と目が合う。

厳しい目つきで睨まれた。


僕の考えていることを見抜いたのだろう。

馴れ合いを拒絶する、強い目だった。

やっぱ、そうだよな。


長いラリーの後、チャンスリターンがきた。

僕が力任せに打ったスマッシュは狙い通り右へ・・・兄の痛めた足の方へ飛んだ。


・・・終わった。


そう思ったのと同時に、何か白いものが猛スピードで目の前を通り過ぎた。

それが、兄のコートから打ち返されてきたシャトルだと気づいたのはしばらくしてのことだった。


あの左足で打ち返してきたんだ。

そうだった。

そういう奴だった。


渾身のスマッシュを打ち返されたのに。

なぜか笑いが込み上げてきた。

やっぱ、そうこなくっちゃな。


それが兄の最後のショットになった。

コートに座り込んでしまい、自分では立つこともできないようだった。

照明がまぶしかったせいか、兄の表情は悔しそうにも、申し訳なさそうにも見えた。


僕に気づいたのか、兄の顔が上がった。

目と目が合う。

どちらからともなく笑った。


「またやろうな、兄キ。」


返事を待たずに強引に腕を取った。

肩を貸してふたりで医務室に向かって歩く。

客席から大きな拍手が送られた。


結局今回も決着はつけられなかった。

でも、あきらめない限りチャンスは何度でもくるはずだ。

そう、あきらめない限り。


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