Blue Umbrella


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バドミントン短編小説

ゆかりと敬子は幼稚園の頃からの幼なじみで大の仲良し。

今は同じ大学に入り、ゆかりはバドミントン、敬子はアルバイトに明け暮れる日々を過ごしている。

しかしそんな2人は些細なすれ違いで、絶交状態に。

仲直りできないまま、ゆかりの試合が近づくが・・・

 


雨の日は好き、自分の憂鬱が雨のせいだと思えるから。モヤモヤした想いを優しく流してくれるから。

ずっとずっと降り続いてくれたらいいのに・・・

夏の始まりの昼下がり、狭い教室で眠そうな学生達が黒板に書かれては消されていく文字をノロノロと書き写す。

いつもの席でいつものように受ける授業、だけど・・・何かが違う。

彼女、片岡敬子は幼稚園の頃からの幼馴染み。

正反対の価値観を持つ、誰が見ても合わない2人だけど、不思議と馬が合った。

同じ大学に進んだが今は、わたしは昔からやっていたこともあってバドミントン部に入り、彼女はどこにも入らずにバイトに明け暮れている。

それでも時間をつくってはご飯を食べたり買い物に出かけたり付き合いはつづいている。

大学を卒業して社会人になって、もしかしたらそれぞれ結婚して、それでもずっとずっと一緒。

それが当然だと思っていた。

わたしたちはよくケンカをする。

いつも最後にはわたしが折れるという形で終結する小戦争。

あの日も2人で入った喫茶店で、小競り合いは始まった。

原因も思い出せないくらいだから些細なことだったのだろう。

でも、この日は違った・・・何気なく口にしたわたしの一言で、宇宙の時間が一瞬止まった。

「ただボーッと生きてる人にどうこう言われたくないわよ!」

しまったと思ったときには時すでに遅し、敬子はゆっくりと席を立つと1人で来たかのように会計を済ませて帰ってしまった。

小さくなっていく背中、引き止めて謝れば間に合う。

だけど拒まれている気がしてわたしには何もできなかった。

それから1週間、敬子からは何の音沙汰もない。

わたしが原因なのだから当たり前と言えば当たり前の話だ。

わたしはどこかで敬子に対してうぬぼれていたのではないだろうか。

いつも一緒にいるのが当たり前なのだ、と。

明日は試合がある。

前回は手も足も出せずに負けてしまい悔しかった。

勝ちたくて勝ちたくて勝ちたくて、毎日倒れるまで一生懸命練習した。

放り出してあった携帯がわたしを呼んでいる気がした。

そして、悩みぬいた末のメールはあっという間に送信されていった。

「明日、敬子に来て欲しい。」

試合当日もやっぱり雨だった。

ギリギリまで握り締めていた携帯は結局鳴ってくれなかった。

悔やんでも仕方がない、携帯を閉じた。

審判のコールを受けて、わたしはコートに上った。  

蒸し暑い体育館の中で迎えた最終セット。

流れは少しずつ、それでも確実に相手に傾いていた。

わたしは、湧き上がるネガティブなイメージを押し殺そうと必死だった。

ラケットが重い。コートが広く感じる。時間があっという間に過ぎる。

「がんばれ、ゆかり!!」

突然の声に驚いて振り返ると、真剣な顔の敬子がいた。

目が合うと唇の端をほんの少しだけ上げてニッと笑った。

気持ちがすっと軽くなった。

わたしは軽く頷いてからラケットを握りなおした。

体育館近くの公園のベンチで、わたしは雨に打たれてボーっとしていた。

最後のスマッシュの音がまだ耳に残っている。

結局、試合はあとわずかというところで負けてしまった。

顔を上げてそっと目を閉じる。

顔に当たっていた雨が途切れた。

目を開けると青い傘がいっぱいに広がっていた。

「お疲れ様、がんばったね。」

負けたのが悔しかったのか、敬子が帰ってきてくれて嬉しかったのか。

とにかくその一言で色々な気持ちが噴き出してきて、わたしは敬子にしがみついた。

彼女のお気に入りの青い傘が転がっていった。

ほっそりした腕がわたしの背中に回ってきて、痛い位に力が込められた。

キレイな長い髪からは、少しだけ夏の匂いがした。


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