ダブルスが強い人はなぜ臆病なのか?

ダブルス

次の試合に向けて、精力的な練習をつづける順平。

その中で、うまくいかないことがあっても常に前向きだ。

そんな順平に、サーブリターンの達人ミチルは・・・

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「ちょっとあんた!またサーブリターンが雑になってるわよ。」

「あぁ、ごめんなさいミチルさん。次、気をつけます。」

「次、次って、あんたの次はいつなのよ!!」

「本当の本当に次こそ大丈夫ですから。」

「サーブリターンはバドミントンダブルスの中核なのよ。わかってる?」

「もちろんですって。本当に大丈夫ですから。」


順平を叱責する、我がチームが誇るサーブリターンの達人ミチル。

その厳しさに最初は落ち込んでいた順平だったが、最近はそれを課題として前向きに捉えられるようになってきた。


全体の練習が終わっても、順平の1日は終わらない。

今日指摘されたことはすべて頭に入っている。

昨日より今日、今日より明日・・・積み重ねた努力はいつか必ず実るはずだ。


「あんた、まだ練習するの?」


帰り支度を済ませたミチルが声をかけてきた。

今日はどこかへ行くのだろうか。

いつもよりオシャレをしている。


「はい。ミチルさんに指摘されたサーブリターンのこと、しっかり復習しておこうと思いまして。」

「ふーん。あんなに厳しく言ったのに、ずいぶん前向きなのね。」

「はい。このチームはみんなバドミントンがうまいから、見てると本当に勉強になります。」


その一言を聞いたミチルはバッグを下ろし、3歩順平に詰め寄った。


「ねぇあんた。本気で強くなる気ある?」

「当たり前じゃないですか。」


ミチルは自分の長い黒髪をいじりだした。

彼女がイライラしているときのクセだ。


「『チームのみんな・・・』ねぇ・・・。」

「あの、僕、何かおかしなこと言いました?」

「あんたはどうしていつも個人技ばっかり練習してるの?ダブルスの選手でしょ?」

「えっ?」

「それに、あんたの課題って練習の中で出たことばっかりよね。あんたが勝たなきゃいけないのは誰?」

「勝たなきゃいけない相手、ですか?」


ミチルの真意がわからない順平。

その様子にミチルは、ヤレヤレと首を振った。


「このチームでバドミントンやるなら、試合で結果を出さなきゃダメなの。わかってる?」

「そりゃぁもちろん。」

「だったら何で」

「うっ・・・」

「そんなことじゃ、チームの人数が増えたらあんたは試合に出れなくなるわ。わたしがあんただったら、そんな余裕は持てないわ。」

ポイント

いつも明るく練習に参加し、厳しいことを言われても前向きにがんばる選手っていますよね。

心が強くポジティブで、日々着実に前進しているように見えます。


一方で、一見ネガティブ思考で、いつも余裕のない態度で練習にのぞむ選手もいます。

どこか自信なさげで、見ていて心配になることもしばしば。


試合で結果を出せるのはどちらでしょうか。

・・・意外に後者だったりします。


この態度の差と、結果の違いはどこからくるのでしょうか?

それは、両者が意識しているものの差です。


明るいけれど結果を出せない選手の意識は、所属しているチーム止まり。

手の内を知っているチームメイトと、リラックスした環境でやるゲーム練習がすべてです。

課題が出ても、ゲーム練習で負けても、また挑戦すれば良いのですから余裕しゃくしゃくです。

たまに試合に出ても1回戦止まりですから、負けてもダメージもさほどありません。

彼らは、解決していないこと・目を向けなければいけないことが山のようにあることを知らないのです。


一方、ネガティブだけど結果を出せる選手の意識は、チームの外にあります。

戦う相手はほとんどデータのない、おそらくは自分より強い相手。

戦いの舞台は、練習したことが通用しないのが当たり前の試合会場。

やっておきたいことは山のようにあるのに、時間は止まってくれない。

その不安は、試合で結果を出すまで消えません。


両者の本質は、厳しい実戦の中で現れます。

練習だけを見てきた選手の心の強さは、ほとんどの場合見せかけで、苦しい戦いの中であっという間に消え去ります。

一方、外の世界を見つづけてきた選手は、最後まで折れない心で戦い抜くのです。


「ネガティブ=マイナス」とは限りません。

不安を恐れず、受け入れる勇気を持つ人には、それに見合った報酬が待っているのです。


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