教え子を前向きにする欠点の指摘法

プレーヤー

指導者たるもの、誰よりもプレーヤーの欠点を見つめ、その解消につとめなくてはいけません。

でも、誰だって自分の欠点を指摘されるのは嫌なものです。

もちろん遠慮する必要はありませんが、問題へのプレーヤーの取り組み方には、指導者の伝え方が大きく影響します。

どうすれば、プレーヤーが前向きに問題に取り組めるのか。

それではストーリーをどうぞ。

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昼休みの職員室。

教材づくりで寝不足の岡崎は、眠気を覚ますために、苦いコーヒーをすすっていた。


やがて、職員室のドアが開いて、バドミントン部の部長 岸田が入ってきた。


「ん?岸田か。今日はどうした?」

「ちょっと先生に相談があるんですけど...」

「そうか、まあ座れよ。」


岡崎は、近くにあったイスを引き寄せて、岸田の席をつくった。


「で、どうしたんだ?」

「2年の野村に、バドミントンのことでアドバイスをしたいんですけど。」

「やったらいいじゃないか。」

「でも、あいつ、すぐ落ち込むからどう伝えたらいいものかと思いまして・・・。」

 

たしかに野村は、ちょっと欠点を指摘しただけで暗くなってしまう。

岡崎は、ぬるくなってしまったコーヒーを一気に飲み干してから話を続けた。


「岸田。」

「は、はい。」

「実はかなり言いにくいことがあって、言おうか悩んだんだけど聞いてくれるか?」

「は、はい。何でしょう?」


岡崎の真剣な表情に戸惑う岸田。

そして岡崎の口から出た言葉は・・・


「最近気づいたんだけど、岸田って自信がない時、目がキョロキョロ動くよな。」

「え!?」

「自信がないのが部員に伝わるのはマイナスだと思うんだ。」

「た、たしかに。」

「でもいい方法があるから大丈夫。やってみないか?」

「はい、お願いします。教えてください!」


岡崎はニヤリと笑って言葉を続けた。


「どうだ?」

「はい?」

「これならうまくいくと思わないか?」


岸田はそのとき初めて、岡崎が自分の欠点を指摘したことに気づいたのであった。

ポイント

真剣に何かをしている人への指摘は、時としてナイフのように心を傷つけます。

ふたりの会話に注目してみてください。

岡崎先生は次の3つのポイントをおさえています。


■1.最初の呼びかけ

「かなり言いにくいこと」「言おうか悩んだ」

と言われたら相手はかなりの事態を想定します。

するとその後で話すことが小さく感じられます。


■2.問題のレベルを下げる

キーワードは「最近気づいたんだけどちょっとだけ・・・」です。

「前から気になっていた」は「自分はずっとダメなんだ。」と解釈される恐れがあります。


■3.希望をゴールに設定する

欠点が好きな人なんていません。

それをただ指摘されるだけというのはあまりにも酷です。

しかし、具体的な解決策を指し示すと、そこに希望が生まれます。


一見、ずいぶん遠回りなやり方です。

しかし、一流と呼ばれる指導者は多少遠回りをしても、一歩一歩着実にすすめたほうが結局得をする、ということを知っているのです。


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