ゲームを支配できる前衛の条件

前衛

前衛として、勝利に貢献するために何ができるのか。

その答えを探し続ける順平。

そんな順平に前衛マエストロ元木が出した回答は・・・

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「よっしゃ、そろそろ始めますか。」


誰もいなくなった体育館に順平の声がこだまする。

後輩の指導などに入り、自分の練習が十分に取れない日は居残り練習をするのが最近の習慣だ。


一人暮らしで彼女なしの順平。

練習後の予定はなく、今はバドミントンが恋人だ。

寂しさを感じることがないと言えば嘘になるが、これはこれで充実しているとも思う。


今日の課題は、前衛の基本、プッシュとヘアピンだ。

ネット際で良いプレーをするには、ショットのコントロールだけ練習しても意味がない。


どうすれば、もっと早くポジションに入れるか。

どうすれば、少しでも速いタッチができるか。


考えることはたくさんある。

集中して練習すると時間はあっという間に過ぎる。

気がつくと、体育館の職員が無言で「早く帰れ」のまなざしを送っていた。


翌日。

筋肉痛の体で練習に出てきた順平は、先に来ていた前衛マエストロ元木に声をかける。

やがて元木の様子がいつもと違うことに気づいた。


彼は、前衛なのにスマッシュの練習をしていた。

それも、トップ&バックのポジショニングを想定して。


不思議に思った順平は、元木の練習を止めて声をかける。


「あの・・・元木さん前衛ですよね。」

「何だよ、邪魔するなよ!前衛だけど何か?」

「何でスマッシュの練習なんかしてるんですか?しかもトップ&バックの立ち位置で。」


順平の問いに、元木は唖然とした表情を浮かべた。


「前衛は前衛の仕事だけしてりゃ良いなんて、いつの時代のバドミントンやってるんだよ。」

「はい?」


なぜそんなことを言われたのか、理解できない順平。

それを無視して、元木は話を続ける。


「お前、最近のバドミントンのゲーム見てないのか?うまい前衛はみんな後衛のプレーもこなすぞ。」

「そ、そうなんですか?」


話がまったく読めない順平。

元木は咳払いをした。


「お前、良い前衛ってどんな奴だと思う?」

「ええと・・・プッシュがうまくて、ヘアピンもうまくて、あと・・・」

「まぁそれも確かに大切だけど、もっと大事なことがあるだろ。」

「う~ん・・・わかりません。」

「後衛の動きやすさは前衛で決まることを知ってる奴だよ。」

ポイント

鋭いプッシュ・正確なヘアピン・前につめるダッシュ力・・・

もちろん、これらも前衛の大切な要素です。

しかし、それと同じか、もっと大切なことがあります。


前衛に必要とされているポイント、それは・・・後衛の動きやすさは前衛が決めるのを知っていること。


もちろん、後衛が前衛をフォローすることも重要です。

しかし、もともと後衛に比べて守備範囲が狭く、動いても隙ができにくい前衛がフォローの主導権を持ったほうが、コンビネーションは取りやすくなります。

最近のバドミントンで、前衛が守備範囲をより広く取るようになってきたのも、このためです。


ダブルスが前衛と後衛の総合力というのは、誰でも知っています。

しかし、なんとなくフォローしあわなければ、というような甘い意識では、効果的な動きはできません。


自分は本当に前衛としての役割を全うしているか、もう一度考えてみましょう。


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