強いダブルスペアの前衛はつま先をこう使う

ダブルス

バドミントン雑誌の特集から、ステップアップのヒントを得た順平。

さっそく自分のプレーに取り入れることにした。

だが、前衛マエストロ元木は、そんな順平に対して・・・

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ある日の練習の昼休み。

順平は、体育館の片隅で食い入るようにバドミントン雑誌を読んでいた。


「うーん、なるほど・・・」


順平が開いているページには、「ここがポイント バドミントンダブルスの新基準」という大きな見出し。

その内容は、最近のバドミントンダブルスのトレンドなど、順平にとってはどれも刺激的だ。


その中で特に順平が感銘を受けたのが、フットワークについての記事だった。

そこには、人は股関節の構造上、横への移動の方が得意だということが述べられていた。

これを利用して進行方向に対して、体を横向きにすることで移動スピードを上げられるというのだ。

確かに言われてみれば、最近のトッププレーヤーは、体を少し斜めにして、横向きの体勢からフットワークに入ることが多い気がする。


さっそくその場でフットワークを踏む順平。

書かれていたとおり、つま先を内側に向けて体を斜めにする。

一歩踏み出すと、なるほど確かに力が入れやすい。


(これは、使える!!)


順平は辺りをキョロキョロと見回した。

どうやら誰も気づいていないようだ。

このテクニックを自分だけの秘密にすれば、きっとチームメイトたちは自分の急成長に驚くことだろう。

その様子を想像すると、自然に顔が緩んできた。


基礎練習が終わり、実戦形式のゲーム練習の時間がやってきた。

順平は前衛を買って出た。


前衛はダブルスにおいて、前に詰めるスピードが攻撃力に直結するポジション。

新フットワークを試すにはもってこいだ。


今日の対戦相手は、チームが誇る前衛マエストロ元木のペア。

進化したフットワークであっと言わせてやる!!


ゲームが始まってしばらくすると、元木はヘアピンを打ってきた。

ネットギリギリの良いヘアピンだ。


以前なら拾えなかっただろう絶妙なコース。

だが、今日は違うぞ!!

順平の目がギラリと光った。


つま先を内側に、少し大げさなくらい横向きの体勢を作った。

力強い一歩。


(よし、いける!!)


確かに、いつもより速くネット前に詰めることができた。

しかし、そのヘアピンを拾うことはできなかった。

前より余裕を持って落下点に入れたはずなのに、なぜか前より拾いにくいのだ。


コートに落ちたシャトルを見ながら、首をひねる順平。


そんな彼に、クルクルとラケットを回しながら元木が声をかけてくる。


「よう、どうした順平?変な顔して。」

「あれ、おかしいなぁ。これくらいのヘアピン、拾えるはずなのに・・・」


その言葉に、元木は少し不機嫌そうな表情を浮かべた。


「お前なぁ・・・時と場合を考えろよ。
 どこで覚えてきたか知らんが何でも横向き移動すりゃ良いってもんじゃねえよ。」

ポイント

人が縦より横の方が動きやすいのは、股関節の構造によるもの。

野球のランナーは、進行方向に対して体を横にしたポジションからスタートを切るのもこのためです。


バドミントンの場合も同様。

アテネオリンピックで優勝したインドネシアのタフィ選手を始め、最近のトップ選手は横向き(厳密にはシャトルを打ちやすいように斜め)のスタートを切ります。

そのため、踏み出す足は自然に内股になり、つま先も進行方向に対して内側を向きます。


ただ、この方法も万能ではありません。


たとえば、今回のストーリーでも出てきた前衛の場合。

前衛が前に詰めてプレーする時というのは、たいていネット前でのヘアピンの対応で、低い位置のシャトルを打ちます。

やってみればわかりますが、つま先が内側に向いた状態で低い位置のシャトルを打つと、足が窮屈でうまくいきません。

せっかく速くシャトルの落下点に入れても、次の動作に支障が出ては意味がありませんよね。


常に新しい知識や技術を取り入れる姿勢は、確かに大切です。

しかし、それがシチュエーションに合っていなければ意味がありません。

いまやっていることが何のためのことなのか。

自分の頭で考えられるプレーヤーになりましょう。


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