ノータッチ狙いのバドミントンはもう古い

戦略

バドミントンをやっていれば誰でもあこがれる、ノータッチで決まるスマッシュ。

順平もまた、そんな誰にも触れない強烈なスマッシュを目指し、奮闘していた。

ただ、それを見ていた大垣は・・・

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「ふんがーーーー!!」


掛け声とともに、力任せにスマッシュを放つ順平。

だが、体勢の整わないところにカウンターを打ち返されてしまった。


そんなことがあった昼休み。

最近、順平が読んでいるのは、いつものバドミントン教本・・・ではなく有名な武道家の書いた勝負に関する本。


『自分なりの必殺技を持っている人は強い。そこから自信が生まれ、それは相手へのプレッシャーになる』


その一文に強く惹かれた順平。

自分のバドミントンに足りないものが見つかった気がした。


(よし、誰にも触れないノータッチで決まるスマッシュを僕の必殺技にしよう!)


順平の挑戦が始まった。

スピード・打点・コース・タイミング・・・改善すべきことはいくらでもある。


「どりゃ~~~~!!!」


午後の練習でも、順平の試行錯誤は続く。

ただ、その迫力とは裏腹に、順平のスマッシュは決まらない。

バランスを崩したところに反撃を受けたり、無理な体勢から打ったためにアウトになってしまうことも少なくない。


そんなある日、順平に声をかけてきたのは、後衛のスペシャリストこと大垣だった。


「大変だよ順平ちゃん!僕のラケットに傷が入ってるのに気づいちゃったんだ。」

「はぁ、そうですか。」

「傷(きず)に気づいたんだってば!」

「大垣さん。わかってますから。スベッたダジャレを繰り返すのって見苦しいですよ。」


一瞬、2人の間を流れる時間が止まった。

やがて、大垣はスベッたことをもみ消そうと、強引に話題を変えてきた。


「順平ちゃん、一撃必殺のスマッシュを身につけたいんだって?」

「あ、はい。そうなんですよ。」


それを聞いて、大垣の顔がピッと引き締まる。

そして、ゆっくりと口を開いた。


「順平ちゃん。後衛として決定力のあるスマッシュを探求し続けるのは、確かに大切だよ。」

「はい。」

「でもノータッチでスマッシュを決めるなんて、よっぽど才能があるか、初心者相手じゃないと無理だよ。」

「・・・じゃあ、僕がやってることはムダってことですか?」


順平の口調に、落胆が入り混じる。

そんな順平に、大垣は1冊の文庫本を差し出した。


「これを読んでごらん。きっと今の順平ちゃんに必要な答えが書いてあるから。」


大垣が貸してくれたのは、ピッチャーを主役にした野球モノの小説。


自分の部屋で本を開く順平。

臨場感あふれる描写で、すぐにストーリーに引き込まれる。


高校を卒業し、自慢の剛速球を武器にプロ野球に乗り込んだ主人公。

しかし、それもプロの世界ではまったく通用せず、結果を残せない。

戦力外通告におびえる中、彼がたどり着いたのは「打たせて取るピッチング」。

新しいピッチングと努力を武器に、弱小だったチームを優勝に導いていく。

そんな話だった。


一気に読み終えた順平は、本を閉じてつぶやいた。


「ありがとう、大垣さん。」

ポイント

バドミントンの試合を見ていると、スマッシュが打てると見るや、多少強引でも全力で打ち込みにいく後衛をよく見かけます。

一発で決まればそれに越したことはありませんが・・・実際は今回の順平君のように空回りしてしまうことがほとんど。

張り切れば張り切るほど、こちらの隙が大きくなり、自滅的なミスを重ねてしまいます。


戦術・戦略の進歩や、ラケットの軽量化によるレシーブ力向上などを背景に、一発で決めるバドミントンは時代遅れになってきています。

そこで少し視点を変え、相手に取らせることを前提にしてみてはいかがでしょうか。

多少ラリーは長くなるかもしれませんが、急がば回れで結果的に得点の効率化につながります。


●スマッシュは後衛の位置を下がらせ、前衛のフォローをできないようにするためのもの

●ドライブの打ち合いは、相手の上体を浮かせる攻撃の準備

●スピンネットは、次に叩ける甘い球を引き出すためのもの


というように、まず相手に触らせて次で決める配球ができると、余裕が生まれ、攻め急ぎによるミスを減らせます。

こうやって自分なりのパターンをつくっていくと、相手のレベルや自分の調子に左右されない、安定したバドミントンができるようになりますよ。


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