主導権を握るカットの2つのポイント

カット

ただ速い球を打ち、良いコースを突くだけでは勝てないバドミントンダブルス。

コートに立つたびにその奥深さを痛感する順平。

一人前の後衛を目指し、努力と挑戦の日々は続く。

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順平は一睡もできなかった。

今日は隣町の社会人バドミントンチームを招いての練習試合。

自分のチーム以外の人間との勝負は初めて。

今も興奮で胸が張り裂けそうだ。


約束の時間の5分前、相手チームがやってきた。

キャプテン同士のあいさつ、アップの後、ゲームは始まる。

順平は第1試合に出ることになっている。


相手は順平と同じ歳くらいの若いペア。

キャリアもそう変わらなそうだ。

正直、自信などまったくない。

でも、やれるところまで全力でやるだけだ。


若干固さは残るものの、それなりに日々の練習の成果を発揮し善戦する順平。

これまで教わってきたことをフル動員している。


1セット目を惜しくも落とし、2セット目の中盤。

順平が後衛に入り、トップ&バックの攻撃態勢になった。


その試合を見ていたのが、後衛のスペシャリスト大垣とそのパートナーだった。


「おっ順平なかなか頑張ってるじゃん。なあ大垣。」

「うん、そうだね。さぁこのラリー、大事だよ。競り勝ったほうが主導権を取れる。」

「先に上げた方がやられるな。順平、その調子で低めに集めていけよ。」

「・・・」


息詰まる攻防戦、順平 渾身のスマッシュが続く。

だが、せっかく押していたのに順平はハイクリアを打ってしまった。

それを見て、大垣のパートナーは顔をしかめた。


「あ~順平、何やってんだよ!上げたら負けだって言ってるだろ!」

「いや、あれで良い。順平くん、成長したなぁ・・・」

「えっ?だってせっかく攻めてるんだぜ。上げちまったらダメだろ。」

「まぁ見てなよ。」


高く奥に上がるシャトル。

不意を突かれ、一気に下がった相手ペア。


順平はそれを見て猛然とラケットを振りかった。

そして、鋭いスイングから放たれたのは・・・スマッシュではなくネット際に落ちるカットだった。


大慌てで前に出る相手ペア。

陣形は崩れ、シャトルは中途半端に上がった。


大垣は満足そうに頷いた。


「いけっ、順平ちゃん。」


力強いスマッシュが見事に決まった。


大垣の予想通り、ゲームの流れは、そのワンプレーをものにした順平ペアに向かった。

第3セットが終わったとき、コートには初勝利に顔をしわくちゃにして喜ぶ順平の姿があった。


その様子を見届け、順平に贈る祝福のダジャレを考え始める大垣であった。

ポイント

後衛の攻撃の中で、スマッシュと並んで重要になってくるのがネット際に落とすショット。

カットはスマッシュに近いスピードで打ち出され、直線的な軌道からネット付近に落ちるのが特徴です。


さて、今回の順平君はスマッシュの連打をあえてやめ、ハイクリアを打ちました。

その目的は相手を後ろに下げること。


カットは相手の位置を十分下げなければ、相手がいるところに打つことになってしまうため、効果が半減してしまいます。

一般に「上げてはいけない」と言われるバドミントンですが、きちんとした目的があればその限りではないのです。


カットを打つときのもう1つのポイントは、打った後すぐに攻撃態勢を整えること。

もちろんコースが良ければそのまま決まることもあるでしょうが、相手を前後に揺さぶり、体勢を崩すのがカット本来の目的です。


バドミントンのコートはその使い方で広くも狭くもなります。

ゲームを優位に進められるよう、日々意識してみてくださいね。


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