教え子の意欲を取り戻す発想転換法

指導

バドミントンの楽しさは人それぞれです。

勝つこと、仲間との時間・・・もしかしたら運動不足解消、という人もいるかもしれません。

プレーヤーがどんな動機を持って練習や試合にのぞむか、それは自由です。

ただ、やる気のない態度を取られたり、チームの空気を悪くされるのは困りますね。

では、教え子に意欲的にバドミントンをしてもらうためには、どうすれば良いのでしょうか?

ストーリーをどうぞ。

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3月の始まりは、小雨の降る肌寒い1日だった。

暦の上では春だというのに、校内にはまだコートを着た生徒の姿が多い。


昼休みに入るなり、岡崎はバドミントン部の3年 内田につかまった。

彼が指導する2年の小暮が、うまくなりたい、勝ちたいと口では言っているけれど、覇気がなく、練習で手を抜いているようだ。


延々と語り続ける内田。

岡崎は、たまらず口を挟んだ。

その手には、なぜか財布が握られている。


「内田、お前、お金は好きか?」

「はい?」

「好きか?嫌いか?」

「そりゃぁ好きですけど。」

「じゃあこの1万円やるよ。」

「えっ?マジっすか?」


財布から1万円札を取り出し、内田に見せる岡崎。

内田は目を輝かせた。

だが、岡崎の話には続きがあった。


「ただし、絶対に使わず、財布の中に一生入れておくっていう条件付きならな。」

「何ですかそれ。だったらいらないですよ。」

「あれっ?お金、好きなんだろう?」

「使えなかったら意味ないですよ。」


岡崎は笑った。


「じゃあ質問を変えようか。お前、バドミントンうまくなりたいか?」

「もちろんです!」

「そうか。じゃあ仮にうまくはなるけど、絶対に勝てないとしたら練習するか?」

「しませんよ、そんなこと。」

「おかしいな。お前、うまくなりたいって言ったじゃないか。」

「勝てないんだったら、意味がないですよ!」

「そうか?スポーツは健康に良いし、ボケ防止にもなるし、勝てなくたって良いじゃないか。」

「一度勝つ喜びを知ったら、そんなことじゃ満足できませんよ!」


それを聞いた岡崎は、両手で内田の肩をつかんだ。

そして、まっすぐに内田を見据えて言った。


「お前には厳しい練習に耐える理由がちゃんとある。でも、小暮はどうなんだろう?」

「そりゃあ、うちの部にいるってことは、バドミントンが好きで、勝つために・・・」

「あいつがバドミントン始めたの、高校入ってからだぞ。うちの学校は、部活参加が必須だからな。もしかしたら、仕方なくやってるのかも知れないぞ。」

「・・・そんなことは・・・」

「ないと言い切れるか?」


後輩のことを何も知らなかったことに愕然とする内田。

岡崎は、話を続けた。


「お前を駆り立てる勝利の味ってやつを、小暮にも教えてやってくれないか?せっかくの縁だ。あいつにもバドミントン好きになってもらいたいよな。」

ポイント

あるスポーツジムで行われたこんな実験のお話をお聞きください。


ダイエットのためにやってきた被験者に、次の2種類のウエイトトレーニングをして、その効果をみました。

 

一方は筋力に応じて徐々に負荷を増加しますが、そのことを被験者に伝えません。

もう一方は、被験者の負荷を変えていないにも関わらず、負荷を上げ続けていると伝えました。


実際、成果をあげたのは後者。

また、前者と比べて脱落者も少ないという結果になりました。


後者は、「自分は負荷を増やされても耐えられる」という、目に見える成果で(ウソにも関わらず)意欲を高めました。

反対に前者は、負荷は変わらないはずなのに辛くなるのは、筋力が落ちているからだ、と思い込み、パフォーマンスを下げてしまったのです。


チームやプレーヤーには、個性があります。

残念ながら、こうすれば意欲的に取り組む、というような正解はありません。


しかし、基本は一緒です。

それは、プレーヤーがやっていること、これからやることに対して、成果や変化を見えやすく示しつづけることです。


あなたは教え子に対して、今から何ができるでしょうか?

一度、胸に手を当てて考えてみてください。


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