上級者のクリアはここが違う

クリア

コートの奥から奥まで深く飛ばすショット「クリア」。

一般に奥に追い詰められた時、体勢を立て直すときに使う、バドミントンダブルスでも多様されるショットだ。

順平もそのことに一切の疑問を持たず、ゲームの立て直しのために使ってきた。

ところが後衛のスペシャリスト大垣は・・・

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誰もいない体育館。

1番乗りの順平はいつも通り、教科書を片手にイメージトレーニングをしていた。

この積み重ねがいつか花開く日がくると信じ、チームに入った時からずっと続けている習慣だ。


「クリアは立て直しのためのショットだから、逆にいえば相手がクリアを打つってことはこっちが追い詰めてるってことだよな、よしっ!」


2番乗りのチームメイトがきたのを確認し、教科書を閉じた。


今日のゲーム練習の相手は、後衛のスペシャリスト大垣のペアだ。

しょうもないダジャレを除けば、いつも自分が思いもしなかったことを教えてくれる素晴らしい先輩だ。


「大垣さん、よろしくお願いします。」

「順平ちゃん、そんなにかしこまらなくていいよ。かしこまってあいさつされて・・・かしこまりました~、なんちゃって。」


心の中でため息をつく順平。

・・・これさえなければ心から尊敬できる先輩なんだけどなぁ。


そして始まったゲーム練習。

隙のない配球でタイトな試合を展開する順平ペア。

さすがの大垣も攻めあぐねている。


よしっいける!


さらに攻撃の手を強める順平ペア。

コート奥に追い詰められた大垣はたまらずクリアを打った。


よしっ追い詰めた!

高く上がった打球の落下点でスマッシュの体勢をとる順平。


ところが・・・

そのまま真っ直ぐに飛ぶと思ったシャトルは予想よりはるかに早く落ちた。

逆に体勢を崩される順平。

力なく相手コートに返ったシャトル。

そこには・・・大垣がいた。


ゲームはそのワンプレーで大きくひっくり返った。

試合が終わってもコートを出られない順平。


「大垣さんにクリアを打たせた。僕たちは追い込んでいたはずだ。でも・・・負けてるよね、僕たち・・・」

ポイント

どのバドミントン教本を見ても、ハイクリア(高い軌道で奥まで飛ばすクリア)は、主に体勢を立て直す守りのためのショットとして紹介されています。

しかし、いくら攻撃ができないからといって、ただ返すのはもったいないこと。

シングルスと比べ、1球の影響力が大きいバドミントンダブルスだったらなおさらです。


今回大垣が打ったのは、インパクトの瞬間にラケット面を切ったクリア。

角度をつけないカットというとイメージが湧くでしょうか。


スピードの速いクリアを予想していた相手には、シャトルが落ちたかのように感じられます。


一見簡単そうに見えるクリア。

ちょっと工夫するだけで変わる奥深いショットです。


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