後輩と、前衛マエストロ元木の試合を観戦する順平。
強敵を相手にハイレベルな攻防が繰り広げられる。
そこで順平たちが見たのは・・・
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後輩と、前衛マエストロ元木の試合を観戦する順平。
強敵を相手にハイレベルな攻防が繰り広げられる。
そこで順平たちが見たのは・・・
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順平たちは、地区のバドミントン大会に出場していた。
残念ながら1回戦で負けてしまった順平は、他のメンバーたちの応援に。
チームメイトが1人でも多く、1つでもコマを先に進めらるよう、後輩たちと声を張り上げる。
やがて、前衛マエストロ元木のペアがコートに立った。
「元木さーん!ファイト!!」
「いつもどおりいきましょう!!」
順平は、胸の高鳴りを感じた。
相手は元木と並び、地区トップクラスの前衛と言われるプレーヤー。
まだ2回戦だが、事実上の決勝戦となる注目の1戦だ。
そのゲームを、後輩にポイント解説しながら見守る順平。
「バドミントンは上げたら負けだからね。元木さんがどんなプレーをするか、よく見てなよ。」
「はい!!・・・ってあれ?順平さん、元木さん上げてますよ。」
後輩が言うとおり、元木は高いロブを多用している。
自分の解説をいきなりひっくり返され、少し動揺した順平。
それを悟られないよう、1つ咳ばらいをして言い直した。
「まぁ・・・相手もレベル高いからね。厳しい時はロブで体勢を立て直す。これもバドミントンの基本だよ。」
「なるほど。」
「ほら。相手もロブで息を整えているだろ?奥までしっかり飛ばすのがコツだよ。」
それからしばらくして、後輩がまた順平に声をかける。
「あの、順平さん。元木さんのロブって、相手のロブと何か違うんですか?」
「えっ?」
「相手がロブ打っても、元木さんたちは攻めつづけてるじゃないですか。でも、元木さんがロブを打つと、相手の攻撃が止まります。」
「えっ?ホ、ホントだ。」
確かにそうだ。
元木も相手も、エンドラインぎりぎりの、深いロブを打っている。
だが、後輩の指摘通り、その後の展開は大きく違っている。
「ねぇ順平さん・・・何が違うんですか?」
「ゴメン。ちょっと黙っててくれるかな。」
後輩の問いかけを遮り、もう一度ゲームに集中する順平。
距離も、フォームも・・・特に大きな違いはない。
一体何が違うんだ。
それからしばらくして、後輩がまた声をかけてきた。
「あの、順平さん・・・」
「だからちょっと黙っててって言ったでしょ!!」
「元木さんのロブなんですけど・・・相手より高くないですか?」
「えっ?」
「距離は同じですけど、元木さんの方が、相手より高い放物線を描いているような・・・」
その言葉を聞いた順平は、思わず立ち上がった。
「そうか!高さだ!!高さだよ!!」
ポイント
ロブの基本は、しっかりと奥まで返すことです。
しかし、それだけでは、ロブ本来の役割は全うできません。
ロブ本来の目的、それは自分たちの体勢を立て直すことではなく、相手を後ろに追いやることで、攻めを断ち切ることです。
そのために大切になってくるのが、「ロブの高さ」。
同じ距離でも、その軌道が低ければ、相手の後衛はそれほど下がらなくても拾えてしまいます。
それでは、相手の攻撃の手を緩めることはできません。
そして、高いロブにはもう1つ、大切な役割があります。
それは、相手前衛の意識を後方に持っていくことです。
低いロブでは、相手の前衛は奥に飛んでいないと思うため、ネット前から動いてくれません。
しかし、高いロブであれば後衛のカバーをしようと後ろに下がり、前にスペースができます。
これによって、奥に振ってから手前に落とすという、攻守交替の起点が作れるのです。
シャトルを上げないというバドミントンの鉄則の中、なぜあえて高いロブを打つのか。
それは、逃げるためではありません。
攻撃のためです。
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