強いダブルスペアが得意技で勝てるワケ

ダブルス

4日後に迫った市民ダブルス大会に向け、特訓に明け暮れる順平。

今の課題は、相手の甘いサーブを見逃さず、リターンエースを奪うことだ。

より速く、精度の高いプッシュを心がける順平であったが・・・

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『サーブリターンで主導権を取れるペアが、ダブルスの主導権を取れる』


毎月愛読しているバドミントン雑誌に載っていた、有名監督の言葉に影響を受けた順平。

今週末に迫った市民ダブルス大会に照準を合わせ、今日もサーブリターンの練習に時間を使っている。


順平は、以前からサーブリターンに自信を持っていた。

自分には足がある。

この足を活かして、より速いサーブリターンをすれば相手の出鼻をくじくことができるはずだ。


(もっと速く・・・もっと鋭く・・・)


試合本番で相手をうならせる自分を想像し、全神経を集中する。

今のところ思ったような効果は出ていないが、まだまだこれから。

もう少し練習を積めば、得点に結びつくサーブリターンが打てるようになるはずだ。


試合2日前。

順平の特訓も佳境を迎えようとしていた。


全体練習が終わっても、順平の練習は終わらない。

この後も、当日ペアを組む先輩に付き合ってもらい、居残り練習をするつもりだ。


あと5分で全体練習が終わる。

そんな時、順平に声をかけてくるメンバーがいた。


サーブリターンの達人ミチルである。

今回の大会でも活躍が期待されていたが、残念ながらねんざで応援に回ることになっている。


試合に出られないフラストレーションからか、この数日、いつも以上に険しい態度を取っている。

彼女は、順平の予想通り、トゲのある言葉を投げかけてきた。


「あんた、またムダな練習で居残りするつもり!?
 体育館の照明だって電気を使うのよ!
 ほんと、あんたはムダのカタマリだわ!!」


自分の努力にケチをつけられ、不快感をあらわにする順平。

控えめながら反論を試みる。


「お言葉ですがムダとは思っていません。
 サーブリターンで主導権を握るのは、バドミントンを優位に進めるための基本ですよね?」


ミチルは哀れみの表情を浮かべた。


「かわいそうに・・・この暑さでバカに拍車がかかっちゃって・・・」

「な、なんですとぉ!!」

「あんた、これまで1試合中サーブリターンで何点くらい取ってるか知ってるの?
 自分が点に絡めるプレーは何なのか、よーく考えなさい。」

ポイント

初心者は、得意技を「自分が好きなプレー」や、「自信のあるプレー」と考えがちです。

そして、得意技を磨けば強くなれると信じています。


しかし、実際はどうでしょう。

ゲームのスコアを見てみると、自分が得意と思っていることより、それ以外のプレーで点を入れていたり、相手に有効打を与えていることが多いのではないでしょうか。


もちろん、得意なことを伸ばすのは悪いことではありません。

しかし、そのせいで本来伸ばすべき部分に手が回らないのでは本末転倒です。


本当にバドミントンが強い人が身につけようとする【得意技】は、あくまでも「点が取れる・ゲームを優位に動かせるプレー」。

意味的には、必殺技といった方が近いでしょうか。


得意だからこそ上手くなるし、ゲームでも有効打につながるはずだ、と思う気持ちはわからないでもありません。

しかし、自分の感覚を過信するのは間違いの元。


バドミントンの目的は技の披露ではなく、あくまでも点を取り、そして勝つことです。

「得意なプレー」と「効果的なプレー」の間のズレを意識し、目的に対してプレないバドミントンを心がけたいものです。


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