隙のないダブルスペアはなぜ派手なのか

ダブルス

後輩に股抜きレシーブのコツを聞かれてうろたえる順平。

密かにあこがれているのだが、実は自分もできない。

そんな時、レシーブプリンセス優子は・・・

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ある日のこと。

順平は、先日加入したばかりの新人を指導していた。

今度開かれるダブルス大会に向けて張り切る姿は、こちらまでやる気にさせてくれる。


そんな後輩が、順平にこんなことを言ってきた。


「順平さん。股抜きレシーブのやり方教えてくださいよ。」

「うっ、ええと、それはその・・・」


言葉を濁らせる順平。

後輩の目が、期待で輝いている。

バドミントンを始めたばかりで、何にでも興味を持つ時期だから無理もない。


そんな目をされては、僕はできないんだ、などとはとても言えない。

後ろめたさを覚えながら、突き放した。


「そんなチャラついたことやる暇があったら、もっと基本を練習しろ!ダブルスのフォーメーション覚えたのか?」


せっかく頼ってくれた後輩に冷たく当たってしまったことが申し訳ない。

寂しそうな後輩の後ろ姿に、心の中で頭を下げた。


(ごめんよ~、力足らずな先輩で・・・)


そんな後輩に、歩み寄る影。

我がチームが誇るレシーブプリンセス優子だ。


「・・・トリック・・・ショット・・・やりたい・・・の?」

「はい。でも順平さんの言うとおりです。あんなチャラチャラしたこと覚える必要なんてないですよね。」


聞き耳を立てていた順平の心がチクリと痛む。

その痛みを少しでも消そうと、自分に言い聞かせる。


(そうとも。あんなショット試合じゃ使わないじゃないか。必要ないさ。)


しかし、優子の反応は予想と違った。


「バドミントン・・・うまくなりたければ・・・やった方が・・・良い・・・よ。
 ・・・わたしで・・・よければ・・・教えてあげ・・・る。」


休憩時間がやってきた。

後輩は、熱心に優子の指導を受けている。


「・・・シャトルが・・・体の中心に・・・来るようにして・・・思い切りラケットを・・・突き出す。」

「こっ、こうですか?」

「・・・ほら・・・でき・・・た。やった・・・ね。」


それから数日。

後輩は股抜きレシーブだけではなく、背面レシーブも打てるようになった。

自信がついたのか、ゲームでの動きも良くなったような気がする。


後輩は、このことをきっかけに優子にばかり質問をするようになった。

優子も彼を気に入ったらしく、ダブルスのゲーム練習でペアを組むことが増えた。


(こ、これはマズいかも・・・)


居残り練習のメニューに、トリックショットの練習を追加する順平であった。

ポイント

股抜きレシーブや背面レシーブといったトリックショット。

初心者にとってあこがれのプレーの1つです。


ただ、基本フォームで打つショットに比べ、威力・コントロールともに落ちるため、実戦で使われることはほとんどありません。

実際、堅実なプレーを好むベテランや指導者には、良く思われないこともあるようです。


もちろん、本番の試合では少しでも安定した確実なフォームで打つことを優先するべきです。

しかし、これらが全く役に立たないかと言えば、そうとは限りません。


なぜなら、トリックショットには「コーディネーショントレーニング」としての効果があるからです。


コーディネーショントレーニングは、体をよりスムーズに意思通りに動かすためのトレーニング。

いつも同じことばかりやっていると、運動のための神経回路は衰えていきます。

しかし、普段やらないことをやると、神経回路が発達し、それまでできなかったことができるようになるのです。


基本練習はもちろん重要です。

しかし、そればかりやって退屈を感じるようになると、練習がマンネリ化してしまい、効率も下がってしまいます。

トリックショットの練習は、そんなときの気分転換としても有効です。

少しずつでも良いので、普段の練習に組み入れてみましょう。


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