Where to go

バドミントン短編小説

バドミントン部キャプテン克也と幸子。

交際から半年、2人は克也の忙しさからすれ違いの日々を過ごしていた。

会えない日々に寂しさを募らせる幸子。

そんなある日・・・

 


私の彼氏、渡瀬克也はバドミントン部のキャプテン。

スラリとした長身と整った顔立ちで女子の間でも憧れの的、認めたくないけど、わたしも憧れていた。

そんな彼がこの春、わたしに告白してきた。

冗談じゃないかと思ったけれど、本当に嬉しかった。

あの頃は良かった・・・何か不倫に疲れたOLみたいな言い方だな。

忙しい中、必死で時間を作ってくれて、サプライズを用意してくれた。

それから半年。いつの間にか遅刻やドタキャンが当たり前のようになった。

守れない約束なら最初からするな!!

あの日、真っ赤になって告白してきたのは嘘だったのかな。

最後に話をしたのはいつだったっけ?

今日は部活の練習日。

わたしのことなんか何にも考えないで好きなことだけやっているんだろう。

そういえば、最近バドミントン見てないな。

(克也のせいで)どうせやることもないし・・・

わたしは靴を下駄箱に戻して、体育館に足を向けた。

そこにはいつものニコニコして大人しそうな克也からは想像も出来ない克也がいた。

大きな声で後輩を指導して、マネージャーに指示を出して、精一杯練習を指揮していた。

帰りの電車の中でも克也の姿が頭から離れなかった。

キャプテンって自分の練習以外にも色々あるんだろうな。

ただのクラスメートだった克也が特別な存在になったのは、女友達に誘われて気まぐれで見に行った大会で彼を見てからだった。

わたしはバドミントンには興味がないしルールも分からない。

でもフルセットの末に相手を下して、ペアを組んでいた男の子と抱き合って喜んでいる姿に胸が熱くなった。

ただ一生懸命に、前だけ見ている克也が好きだったのに今は・・・寂しい。

家に帰って、ベッドに荷物を放り投げた。

誕生日にと女友達がくれたプレゼントだ。

(克也、今頃何をしているんだろうな。)

コツン。

コツン・・・コツン・・・。

不思議に思って窓を開けた瞬間・・・ペシッ

小石がわたしの額を直撃した。

さすりながらにらみつけた先には、学生服の克也が「しまった。」という気まずい顔で手を振っていた。

近くの公園で、並んでベンチに座った二人の間には、気まずい空気が辺りを漂っていた。

やがて無言の雰囲気に耐えかねたのか、克也が乱暴にスポーツバッグからダンボール箱を引っ張り出してわたしに放った。 

「幸子、ほれ。」

「何コレ?」

「何って、今日はお前の誕生日だろ?」

どうせ店員にいわれたものを適当に買ってきたのだろうと思い、わたしは無言で乱暴に箱を開けだした。

「おい、いきなり開けるなよ。」

「いいじゃない、わたしにくれたんでしょ?」

「こういうのは後から感動する方がカッコいいんだよ。」

中に入っていたのはテディベアのぬいぐるみだった。

人懐っこい顔がどこか克也に似ていた。

ちゃんとバドミントン用のユニフォームを着て、小さなラケットとシャトルを持っている。

それからわたしは、品のいいメッセージカードを見つけた。

そして、それを開いた瞬間、言葉を失った。

「大切なあなたへ、生まれてくれてありがとう。僕と出会ってくれて、ありがとう。あなたのことが大好きです。」

こんなものをつくってくれるところ、どうやって探したんだろう。

第一、いってなかったのに、どうしてわたしの誕生日を知っているんだろう。

「お、おい。」

不意に溢れだした涙を見られたくなくて、何もいわずに克也に抱きついた。

彼の動揺が伝わってきて、ちょっと笑ってしまった。

わたしを見てくれて、ありがとう。

わたしを好きでいてくれて、ありがとう。


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